学生さんへ NO.2

卒後2年のみを考えるのではなく卒後の10年計画を立てよう

藤田 次郎教授
平成17年9月15日

 卒後臨床研修制度の必修化により、多くの学生さんは、少しでもよい臨床研修を実施するために研修病院選びに苦労されていることと存じます。皆さんは、最初の2年間をどのように過ごそうかと悩まれていると思いますが、そのような短期的な発想のみではなく、10年計画を立てることが重要と考えます。10年計画を立てることにより、3年目、5年目、7年目に何をすべきかが明確になります。

 卒後10年までで何をしたいですか。南極船に医師として添乗する(私の同級生は実際に南極に行きました)、厚生労働省の役人になる、または外国大使館で医師になる、など様々な夢はあると思います。ただし私たちの教室では、消化器、呼吸器、および感染症を担当していますので、オーソドックスに考えてみたいと思います。

 さて私たち医師は名刺を作成します。その名刺には様々な意味がありますが、私自身の名刺をご紹介したいと存じます。前者は香川大学医学部第一内科講師時代のものの裏側、そして後者が琉球大学医学部感染病態制御学講座(第一内科)時代のものの裏側です。香川大学医学部第一内科講師時代の名刺には様々な資格を記載しています。これは講師の肩書きがあまり大きくないために、自分をよりよく見せるためにこのような資格を記載していたのです。一方、大学教授に就任すると、教授の肩書きがあまりに大きいために、その他の資格を記載する必要はなくなりました。

香川大学医学部第一内科講師時代の名刺【裏側】 琉球大学医学部感染病態制御学講座(第一内科)の名刺【裏側】

 ここで言いたいことは名刺に書ける肩書きは、医学博士であるとか、認定医、専門医、または指導医などであることをご理解いただければと存じます。ではこれらの肩書きは大学に勤務しているから必要なのでしょうか。いやむしろ逆であり、大学病院は大学病院という名前だけである程度のステイタスを得ることが可能ですので、開業医さん、小さな病院の勤務医、あるいは大病院の勤務医の順で、これらの肩書きが求められるのです。

 内科医の立場で、卒後10年計画を立てる際には、多くの先生方はこのような資格を取ろうとすることが一般的だと思います。そこで具体的な計画を練る必要があります。

 まず認定医、または専門医です。この取得に際しては細心の注意を払う必要があります。卒後2年目までは卒後臨床研修の必修化ですので、どの病院で研修しても大きな差はありませんが、3年目以降にきわめて大きな差がでてくるのです。その差はもたらすものは、研修している病院の剖検数です。この年間剖検数を基準に3年目以降の研修病院を選択するべきであり、ここが最も重要なポイントです。若い先生方は剖検の意味をまだ十分理解しておられないかもしれません。ただしよりよい研修のためには剖検を取得することは必須です。なぜなら剖検によって初めて自身の行ってきた診療の質が問われることになるからです。また剖検を取得することは、医師と患者さん、さらには患者さんのご家族との関係が良好でないと不可能です。剖検を取得できたことは、如何に良質な医療を提供できたかの判断基準の1つともいえます。

 日本内科学会ではこのような判断の下、研修の質を高めるために厳密に剖検数を規定しています。たとえば教育病院に求められるのは、年間16体以上の剖検数と年間3回以上のCPCです。さらに教育関連病院に求められているのは、年間3体以上の剖検数と年間1回以上のCPCです。年間3体であれば、自分に回ってくる可能性はきわめて少ないと考えますので、当然のことながら3年目の内科研修は教育病院で実施することが重要です。沖縄県ではこの教育病院は、浦添総合病院、沖縄県立中部病院、中部徳洲会病院、那覇市立病院、ハートライフ病院、および琉球大学医学部附属病院の6つしかありません。ここが1つのポイントです。このような病院で3年目の研修を実施し、剖検を経験することにより内科認定医の資格を4年目に取得することができます。この資格の取得はきわめて重要であり、これを取得しないとその後に専門学会の専門医を取得することはできません。さらに内科認定医を取得後、これらの教育病院で3年間勤務すると、今度は内科専門医の取得が可能になります。しかしその際にも剖検数2体が求められます。

 さてそこからがさらに重要です。仮に消化器専門医になろうと考えれば、消化器病学会と消化器内視鏡学会の2つの専門医は欲しいところです。また呼吸器専門医になるためには、呼吸器学会と呼吸器内視鏡学会の2つの専門医は欲しいところです。ところが沖縄県においては、消化器専門医のための2つの資格を取れる病院は沖縄赤十字病院と琉球大学医学部附属病院しかありませんし、呼吸器専門医のための2つの資格を取ることができるのは国立病院機構沖縄病院と琉球大学医学部附属病院しかないのです。ただし沖縄赤十字病院と国立病院機構沖縄病院は内科学会の教育病院ではないため、この2つの病院に就職した場合は内科専門医の取得をほぼ断念せざるを得ないのです。

 このように考えていくと、3年目以降の病院を選択する際に、内科認定医のみならず、内科専門医の取得を目指し、なおかつ専門学会の専門医を取ろうと考えている医師にとっての最適の環境は、沖縄県においては琉球大学医学部附属病院しかないということになります。開業指向のある方、あるいは勤務医になりたい方こそ大学病院で卒後3年目以降を過ごすことが重要になるということです。どこの病院に就職すればどのような専門医を取得できるかは、インターネットで情報を得ることができますので、そのような情報を活用することにより研修病院を選択していただければと存じます。

 次は医学博士です。大学を離れる人の多くは医学博士はいらない、もうこれからは認定医・専門医の時代であると思われているかもしれません。しかしながら多くの都道府県の公立病院においては、医学博士を取得することにより、より早く内科部長になれることは事実です。また大学の講師に就任するためには医学博士の取得は必須です。医学博士はよく足の裏の米粒であると言われます。取らなくてもいいけど、取らないと気持ち悪いということを表現したものです。しかし逆の見方をすると足の裏の米粒すら取れないのかということもいえます。私は卒後10年間のうち、最低2年間は何らかの研究(臨床研究、または基礎研究)を行い、科学者としてのものの見方、および論文の書き方を学んでおくことは医師の幅を広げるという意味できわめて重要であると考えています。ただし臨床の教室ですので、できるだけ短期間で仕上げ、臨床の研鑽を積むことが重要であることは言うまでもありません。

 参考までに、呼吸器内科、または消化器内科の専門医を目指す医師のために、私の作成した10年計画(案)を示しますので参考にしていただければと存じます。

沖縄県における卒後臨床研修の仕組みと認定医、専門医の取得時期

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