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琉球大学医学部第一内科

グループ紹介 消化器

1.上部消化管グループ

(消化管化学療法)

消化管化学療法グループは、癌治療学会・食道学会・胃癌学会会員であり、外科・放射線科・麻酔科の癌治療専門医の諸先生方との連絡を密に保ちながら、専門家としての質を保っております。診断においては、内視鏡検査、消化管造影検査だけでなく、超音波内視鏡検査や超音波内視鏡下穿刺術、拡大内視鏡検査を行っています。早期癌であれば内視鏡的治療(EMR、ESD)を行い、切除不能進行癌の場会は抗癌剤治療および症状緩和(がん性疼痛管理)に務めています。切除不能な進行胃癌や大腸癌に対しては日本および世界の標準的抗癌剤治療を行い、食道癌においては放射線療法・化学療法を中心に治療を行っています。また癌患者さまの個々のニーズに応えられる診療をめざして、関連施設と連携しながら外来治療を中心とした抗癌剤の投与も行っております。

標準的抗癌剤治療だけでなく、全国的な多施設共同Phase I/II studyにも参加し臨床試験薬の投与も行うなど、最先端の臨床データに基づいた医療を実践しております。

悪性疾患の他は、県内唯一である食道圧モニターによる食道アカラシアの診断と、内視鏡下食道拡張術を行っています。

国内留学として、中央の癌治療専門病院への短期研修も可能であります。

癌の化学療法は、これまでは外科での治療が主でしたが、新規抗癌剤の登場により奏効率や予後の改善が期待される現状において、抗癌剤治療を熟知した腫瘍内科医の育成は急務です。

(糞線虫症)

糞線虫症は、土壌から経皮的にヒトに感染し、主として十二指腸や小腸上部の粘膜に寄生する糞線虫によっておこる寄生虫感染症です。糞線虫は熱帯、亜熱帯に広く分布しており本邦では沖縄・奄美地方に多く見られ、衛生環境の整った現在でも第一内科入院患者のうち50歳以上の約10%程度は本虫を保有しています。これまでに琉球大学第一内科糞線虫研究グループでは検査法の開発、疫学的調査、治療薬の臨床治験、重症例の検討などを行ってきました。以下に研究の概要を述べます。

従来の検査法では、沖縄では糞線虫の高保有者は浸淫地区でも3%程度、一般の検診では0.3%程度と推測されていました。しかし、私達が1988年に発表した普通寒天平板培地法を使用すると、それぞれ18%、4.5%と極めて高率で、糞線虫症は沖縄の風土病ともいえる疾患であることが判明しました。また、沖縄県と鹿児島県の一部を含む南西諸島は成人T細胞性白血病(ATL)の原因である成人T細胞性白血病ウイルス(HTLV-1)が多く見られ、糞線虫との重複感染が高頻度に見られます。当科入院患者での調査では糞線虫陽性者の抗HTLV-1抗体陽性率は37.1%と極めて高率で、陰性者も16.7%でした。逆に抗HTLV-1抗体が陽性患者では実にその17.5%の患者が糞線虫に感染していました。

次いで、私達は本症の治療について研究を開始しました。2002年までは、糞線虫症治療薬として厚生労働省が認めているのはチアベンダゾールのみでした。しかし本薬剤は私達の検討では駆虫率は90%程度と良好なものの副作用が60%程度に認められ、肝機能障害が30%に発生しました。そこでこれに代わる安全な薬剤として従来オンコセルカ症に対し海外で使用されていたイベルメクチンを米国より輸入し安全性、有効性とについて検討しました。研究の進展に伴い米国からの輸入は厚生労働省の熱帯病希用薬の研究班を通じて行えるようになり、400例以上の患者に使用しました。その結果駆虫率は約95%と良好で、副作用は軽微なものを5%程度に認めたのみでした。現在は当科で行った臨床治験の結果承認され市販となっています。

このようにイベルメクチンは画期的な薬剤ですが、重症、難治の症例も存在します。現在は重症例・難治例の治療法の確立に関する研究と糞線虫保有者の局所的全身的免疫学的検討を行っています。治療法に関しては具体的には通常の2倍の期間薬剤を使用し、その有用性を検討しています。一方の免疫学的検討は、HTLV-1と糞線虫の重複感染者がすべて免疫能が低下しているわけではなく、なぜこのように高率に感染者がいるのか、重症化するのか解明が必要であり研究を開始しました。糞線虫とHTLV-1の重複感染者はinterferon-γ、interleukin-4のバランスが崩れて殺虫が困難となっていることが推測される結果が得られています。

以上のようにわが国では沖縄県に特有の疾患の様相を呈する糞線虫症に関する研究ですが、全世界的にみると熱帯・亜熱帯に住む多くの人々の福祉に貢献することにもなります。そして、その研究は沖縄で行いたいと私たちは考えています。

(H.pylori)

沖縄県における消化性潰瘍(胃潰瘍・十二指腸潰瘍)の比率は、本土とは異なり高齢者においても十二指腸潰瘍の比率が高く、欧米と同様な傾向であることが知られています。また、胃癌の死亡率、集団検診発見率においては、本土平均の半分以下であり疾患構造が異なることが指摘されています。

これらの上部消化管疾患におけるH.pyloriの作用機序は全世界的に解明されつつあり、大きく関与していることは間違いありません。われわれは、平成4年・7年に一般住民のH.pylori感染率を本土と比較し感染率には有意差が無いことを示しました。感染率には差が無いのに疾患構造が異なる? H.pylori―宿主との免疫応答の違い・菌体側(病原因子)の違い、双方の視点から研究を進めています。

治療に関しては、消化性潰瘍に対するHP除菌療法はもとより、MALTリンパ腫、内視鏡的粘膜切除術後・粘膜下剥離術後の胃癌症例また特発性血小板減少性紫斑病に対する除菌療法も取り組んでいます。1次除菌失敗例に対する2次除菌に対しても患者さんの同意を得た上で積極的に行っており、高い成功率を維持しています。

2.下部消化管グループ

下部消化管グループでは、炎症性腸疾患(クローン病・潰瘍性大腸炎)や大腸腫瘍の内視鏡的治療をはじめとして大腸(小腸)出血に対する緊急内視鏡的止血術や蛋白漏出性胃腸症の診断治療、その他各種腸疾患全般を担当しております。特にクローン病はこれまで117人、潰瘍性大腸炎は182人の患者様の診療を行い最新最善の治療に努めており、沖縄県のみならず九州でも代表的施設のひとつとなっております。大学病院という機能上、診断・治療困難な腸疾患の患者様を県立・市立・赤十字など公的大病院から診療所まで幅広くご紹介いただいております。一方、急性胃腸炎のようなcommon diseaseも救急室より時々入院いたします。したがいまして、よくみる疾患からまれな疾患、難治性・重症の疾患まで幅広く経験することができ、卒後初期臨床研修はもちろん専門医取得を希望されている先生方の後期臨床研修として最適だと思います。大学病院・関連市中病院の双方で研修することにより、バランスのとれた消化器病専門医になることが可能であり人的ネットワークもできるかと思います。また、消化器科として重要な内視鏡の技術習得にも力をいれており、下部消化管内視鏡検査も多数の経験を通して習熟していくシステムになっています。これまで当医局より消化器内視鏡学会指導医・専門医を県内に多数輩出してきました。

臨床・教育重視ですが、炎症性腸疾患の厚生労働省研究班関連施設として研究活動も臨床研究を中心に活発に行っています。詳しくは業績集をご参照ください。独自に行っている難治性潰瘍性大腸炎に対するスクラルファート混合ベクロメタゾン注腸療法や免疫抑制剤・白血球除去療法の適切な使用、クローン病に対する抗サイトカイン療法、大腸腫瘍における最新の拡大内視鏡によるpit pattern診断を用いた質的診断の向上と治療への応用などを主な研究テーマにしております。基礎研究では潰瘍性大腸炎モデルのT cell receptor knock out mouseを用いて、病因の根幹となる自己抗原が大腸上皮内に存在する糖結合蛋白のgalectin-4であることを初めて解明しました。根本療法への突破口として更に病態解明を図っていきたいと考えております。

3.肝疾患グループ

沖縄県はウイルス性肝疾患における肝炎ウイルスの分布が日本本土と違い特徴的で、特にB型肝炎ウイルスやデルタ肝炎ウイルスに関する調査研究が行われています。

沖縄県におけるB型肝炎ウイルス感染者の分布は特異的で、ウイルス感染者の割合が日本全体の平均に比べて高率であるにも関わらず、B型慢性肝疾患(肝硬変・肝癌)の死亡率が低率です。そのためB型肝炎ウイルス感染者におけるその自然経過や予後に関する研究を行っています。また本邦では稀とされているデルタ肝炎ウイルスの高浸淫地区も存在していますので、デルタ肝炎に関する臨床及び遺伝子検索を含めた疫学的特徴を明らかにするための調査研究などを行っています。非ウイルス性肝疾患の研究としては、非アルコール性肝炎(NASH)や原発性胆汁性肝硬変などの臨床研究を中心に行っています。また実際の臨床としては大学病院だけでは十分な症例の経験は不足しがちであるので、多数の症例を経験できるように関連病院との連携をとりながら行っています。