大学院の紹介
抗菌薬の発明により、感染症の治療は飛躍的に進歩した。しかし、抗菌スペクトルが広く強力な薬剤が次々と開発されているにもかかわらず、新たな耐性菌の出現はあとを絶たない。そして、医療進歩に伴う高齢化や免疫不全患者の増加はこのような耐性菌の治療を難しくしている。我々は生体の感染防御機構を明らかにすることで、難治性感染症の新たな治療法やワクチン療法を含めた予防法の確立を目指し、動物実験モデルを用い免疫学的な視点から研究を行っている。
感染症に対する生体防御機構には初期から働く自然免疫(innate immunity)とそれに遅れて働き始める獲得免疫(adaptive immunity)の2つに大別される。感染数日後におこる獲得免疫が強力な作用をもつことから、自然免疫は獲得免疫が作用するまでの‘つなぎ役’として捉えられてきた。しかし、近年の研究で自然免疫が単なる‘つなぎ役’にとどまらず、その後の獲得免疫の‘質’をも左右する可能性が考えられ、その働きが注目されている。
我々の研究では、マウスを用いた肺炎球菌感染実験において自然免疫細胞の1つであるNKT細胞が感染局所で好中球遊走に関連するサイトカインの産生を高め,好中球遊走を促し感染防御において重要な役割を果たしていることを明らかにしている。そして、NKT細胞の活性化作用をもつa-Galcerを投与することで肺炎球菌の排除が促進することも確認している。現在、NKT細胞が活性化され好中球遊走に関連するサイトカインが産生される機序の詳細な検討を行っている。また、自然免疫細胞の1つであるgdT細胞の肺炎球菌感染における役割についても検討中である。
病原微生物が生体に侵入するとマクロファージや樹状細胞などがそれらを認識することにより炎症の引き金が引かれる。近年、その認識機構に深くかかわっている分子Toll-like receptor (TLR) が発見され、その認識とシグナル伝達に関する研究が進んでいる。我々は、TLRとレジオネラの病原因子に関する研究も行っている。
今後もこれらの研究結果を国内、国際学会及び論文発表を行うことで学外へ発信し、この分野でのより一層の進展に貢献していきたい。
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