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琉球大学医学部第一内科

 

剖検の意義について(続報)

  平成18年8月1日
琉球大学医学部感染病態制御学講座(第一内科):藤田次郎

 日本内科学会から平成17年度、日本内科学会認定医制度、教育病院・大学病院年報が届いた。その内容を見ていくつかの点に驚いた。まず全国的に剖検率が低いことである。教育病院のリストであるから、当然、優れた研修病院のみが選択されているのにもかかわらず、多くの病院の剖検率は10%を切っている。特に一般病院における低下が著しく、剖検率の比較的高い大学病院との差が歴然としている。もちろん民間病院などで経営重視になれば、剖検率が低下するのは必然ともいえるものの、ここまでひどくなっているとは大きな驚きである。   
 参考までに大学病院以外で、20%以上の剖検率を維持している病院は、市立札幌病院、27.4%、千葉徳洲会病院、20.5%、三井記念病院、23.6%、東京逓信病院、24.2%、虎の門病院、25.2%、国立病院機構東京医療センター、23.7%、自衛隊中央病院、45.7%、国立国際医療センター、29.2%(下線は平成16年度のデータ)、国立病院機構松本病院、23.5%、国立病院機構金沢医療センター、24%、市立敦賀病院、20.6%、国立病院機構南和歌山医療センター、43.5%、住友病院、23.8%、大阪府立成人病センター、25%、大阪警察病院、21%、関西電力病院、20.4%、国立循環器病センター、28.4%、神戸市立中央市民病院、25.3%、鐘紡記念病院、44.7%、三菱神戸病院、42.6%、国立病院機構岡山医療センター、23.4%、岡山労災病院、28.3%、徳島赤十字病院、29.5%、などである。剖検率が高い病院として、公的病院の多い傾向が示唆される。
 一方、大学病院80校のうち、30%以上の剖検率を維持しているのは、琉球大学医学部附属病院も含め、12校のみである。また大学病院でありながら、この認定基準(内科剖検体数が16体以上あること,または内科剖検率が20%以上で内科剖検体数が10体以上あること)を満たさない病院が6校あることも驚きであった。

 次に沖縄県での状況を見てみよう(表参照)。沖縄県には、現在6つの教育病院がある。その剖検率は琉球大学医学部附属病院を除くと、ほとんどが1桁の数字が並んでいる。さらに教育病院の認定基準の1つである、「内科剖検体数が16体以上あること,または内科剖検率が20%以上で内科剖検体数が10体以上あること」を2年連続して満たしている病院は、沖縄県立中部病院と琉球大学医学部附属病院のみである。

 この結果が招く問題を把握してみよう。まず日本内科学会の教育病院ですら剖検率が極めて低くなっている状況では、現状の規定を維持する限り、教育病院の継続は困難となる病院が続出することが予想される。実際に、大分県、および鹿児島県においては内科学会の認定基準を満たす教育病院が大学病院以外に存在しない県となったとのことである。さらに自治医科大学の卒業生の多くが医局に所属せずに様々な病院に派遣されることから、本来、内科医として最も必要なはずの、日本内科学会認定内科医の資格を取得することが困難になりつつあるとのことである。同様のことは、大学病院以外で初期臨床研修を実施し、引き続いて大学病院以外で後期臨床研修を継続している多くの研修医についてもあてはまる。

 短絡的にこの問題を解決するために、剖検数、および剖検率の基準を甘くしてはどうか、という意見もあると聞いている。しかし私はその安易な意見には異議を唱えたい。私は、内科臨床医にとっては、剖検を経験することは、きわめて重要な臨床研修の一環であると考えている。剖検ができることは、病理医のバックアップ体制がしっかりしていることを示しており、当然そのような病院では、病理診断のレベルも維持されていると考えられる。我々、内科医は病理診断医との2人3脚で自身の診断技術を磨いていくものであり、その裏付けのない診療は危険であるとさえいえる。またそもそも10名中、9名以上もの症例において、病理学的に死因が特定されない状況は、研修病院の体裁をなしているのであろうか。私見としては、日本内科学会の定めた基準(これすら最近、甘く改定されたばかりである)を重視し、この基準を緩やかにする事なく、剖検率の向上を目指して、個々の教育病院の更なる努力を期待したい。

  平成16年度 平成17年度
  内科剖検数 内科剖検率 内科剖検数 内科剖検率
浦添総合病院 3.3 18 9.3
ハートライフ病院 18 8.1 12 6.5
那覇市立病院 22 10.9 11 4.8
沖縄県立中部病院 23 24 6.8
中部徳洲会病院 16 7.8 5.1
琉球大学
医学部附属病院
15 23.8 21 30.4

 内科剖検数が16体以上あること、または内科剖検率が20%以上で内科剖検体数が10体以上

 ■は教育病院の認定基準を満たしていない年度