1.本研究の目的
フレイルは、英語の「Frailty(フレイルティ)」が語源になっています。日本語に訳すと「虚弱」や「老衰」、「脆弱」などを意味します。厚生労働省によると、フレイルは「加齢とともに運動機能や認知機能が低下し、複数の慢性しっかんの併存などの影響もあり、生活機能が障害され、心身の脆弱性が出現した状態」とされています。多くの方は、フレイルを経て要介護状態へ進むと考えられています。
治療の進歩のおかげでHIVは長期療養が可能になりましたが、加齢とともにさまざまな生活習慣病が増加しています。このような中、HIVと共に生活する人々(PLWH: People Living With HIV)の間でフレイルの合併が懸念されています。
日本では2023年1月現在、HIV陽性者間でどの程度フレイルが起きているのか明らかになっていません。そのため、今回、日本人HIV陽性者においてフレイルを抱える患者さんがどのくらい存在するのか、そしてフレイルに陥りやすい危険因子を調べるために、この研究を計画しました。
2.研究実施期間
2023年2月20日〜2025年3月31日
3.調査データ(該当期間)
2023年2月20日〜2025年3月31日
4.研究の方法(利用する試料・情報等)
●対象となる患者さま
① 琉球大学病院をはじめ、下記4施設に通院中の20歳以上の日本人HIV陽性者
② 少なくとも12ヶ月以上、抗HIV療法を継続している
沖縄県立南部医療センター・こども医療センター、九州医療センター、川崎医科大学病院、大阪市立総合医療センター
●利用する試料・情報
①基本情報:年齢、性別、BMI、腹囲周囲径、下腿周囲径、HIV感染経路、HIV罹病期間、抗HIV療法期間、喫煙歴、飲酒歴、教育歴、現在の職業、年収、抗HIV薬以外の内服薬剤数、同居家族の有無、過去12ヶ月の転倒歴
②基礎疾患:高血圧、脂質異常症、糖尿病、慢性腎臓病、心疾患、脳血管障害、慢性閉塞性肺疾患、悪性腫瘍、C型肝炎、エイズ指標疾患の既往有無
③血液検査所見:診療上の採血とは別に最大15m Lの血液を採取(特殊採血)
HIV診断時及び現在のCD4+リンパ球数、CD4/CD8比、HIV-RNA量、FIB -4、VACS-Index、血算、AST、ALT、CRP、HbA1c、血清Na、血清K、血清Pγ-GTP、脂質分画、血清Cre、血清シスタチン、空腹時血糖値
特殊採血:TSH、whole PTH、遊離テストステロン(男性)、FSH(女性)、エストラジオール(女性)、血中総ホモシステイン、
カルニチン分画血中テロメア長測定、血清cell-freeミトコンドリアDNA
④フレイル情報:日本版CHS基準、Short Physical Performance Battery (SPPB)CHS基準およびSPBBを評価するにあたり
下記4事項を実施
握力:起立した状態で握力計を使って2回測定
歩行:平坦な床面4mのコースを普段歩いている速さで歩行し速度測定
バランス:起立した状態で10秒間維持(足の位置を適宜変更)
椅子立ち上がり:腕を使わず椅子から5回立ち上がりを繰り返し速度測定
⑤認知機能評価:MOCA-J
⑥抑うつ及び不安障害評価:PHQ-9、GAD-7
⑦健康関連QOL評価:SF-12、ERA-12-J
⑧体組成評価:骨格筋指数(SMI)
さらに診療録より下記の情報を調べます。
①研究対象者基本情報:年齢、性別、身長、体重、病歴、診断名、治療歴、出身地(日本、海外)、併存病名(HIV感染、HCV感染、透析症例)
②血液学的検査:ヘモグロビン、白血球数、白血球分画、血小板数
③血液生化学的検査:ALP、総ビリルビン、アルブミン、AST、ALT、γGT、ChE、総蛋白、LDH、クレアチニン、BUN、Na、K、Cl、CRP、総コレステロール
④HBV-DNA量, HBs抗原量、HBc抗体、HBe抗原、HBe抗体、HBVコア抗原量、HBVゲノタイプ
⑤画像検査(CT、MRI、内視鏡検査、エコー、フィブロスキャン)
⑥HDV抗体検査結果(HDV抗体検査が実施された者のみ)
5.試料/情報の他の研究機関への提供および提供方法
共同研究機関においてはそれぞれの研究分担責任者が各施設で匿名化された情報を保管する。共同研究機関から主研究機関である当大学へデータを授受に関しては紙の症例報告書の郵送あるいはデータを暗号化した上でメール送信にて受け取る。機関の間で対応表の授受は行わない。また、共同研究機関における研究参加者には、主研究機関へのデータ移動の際に個人を特定できるデータは含まれないことを説明する。
論文投稿の際に出版社(国外を含む)がデータの提供を求める際は匿名化されたデータを提出する。論文作成時、学会発表時には個人が特定できる情報は一切用いない。
6.試料・情報の二次利用
本研究で取得した試料や情報は別の新たな研究に利用する可能性がある。その場合、再度、倫理委員会へ申請し、
研究機関長の許可を得る。二次利用の可能性に関して同意説明文書にも記載する。
7.個人情報の取り扱い
本研究のデータは全てMicrosoft Excelに記録され、本研究データを扱う際は個人情報とは関係のない本研究用の番号を付して匿名化し、匿名化した情報から研究対象者を識別するための対応表を作成する。この対応表の作成は、感染症・呼吸器・消化器内科学講座の責任者である仲村秀太が行い、パスワードでロック可能な個人情報保管専用のUSBに保管し、第一内科医局の施錠可能な場所に研究責任者の下、厳重に保管する。この対応表は外部に提供しない。
8.本研究の資金源(利益相反)
沖縄県医科学研究財団研究助成金、令和5年度先端医学研究支援事業、令和6年度文部科学省科学研究費より支出する。
9.当院の研究責任者(所属)
仲村秀太(感染症・呼吸器・消化器内科)
10.他の研究機関および各機関の研究代表者
機関名:独立行政法人国立病院機構九州医療センター(研究責任者名:南留美)
(住所:福岡県福岡市中央区地行浜1丁目8番地1号)
機関名:沖縄県立南部医療センター・こども医療センター(研究責任者名:成田雅)
(住所:沖縄県島尻郡南風原町字新川118-1)
機関名:学校法人川崎学園 川崎医科大学附属病院(研究責任者名:和田秀穂)
(住所:岡山県倉敷市松島577)
機関名:大阪市民病院機構 大阪市立総合医療センター(研究責任者名:白野倫徳)
(住所:大阪府大阪市都島区都島本通2丁目13-22)