SARS-CoV-2感染者に誘導された抗体の感染防御能と交叉免疫性解析(研究プロジェクト 2)

2023年2月27日

 

1.本研究の目的および方法

研究目的:2020年度の日本医療開発機構(AMED)「ウイルス等感染症対策技術開発事業」と、現在進行中のAMED「先進的医療機器・システム等開発プロジェクト」(2019-2023年度)、さらに2022年度「新興・再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究事業」において、従来からの抗体量測定に新たに開発した抗体の抗原補足力(親和性)測定値を加えることで、抗体機能、ここではSARS-CoV-2感染者誘導抗体の「感染防御能」の解析精度を増加させ得ることを明らかにしました。このことから内閣府の「健康・医療戦略推進本部」では、現在進行中のAMEDプロジェクト「各種抗体の抗原親和性モニターによる診断・治療一体化アレルギー免疫療法の有効性向上の治療戦略研究」に、新たに「調整費」として追加予算配分して、関連する3課題:COVID-19ワクチン接種者に誘導された抗体の感染防御能と交叉免疫性評価 (研究プロジェクト1)、SARS-CoV-2感染者に誘導された抗体の感染防御能と交叉免疫性評価 (研究プロジェクト2)、COVID-19ワクチン接種者のアナフィラキシー発症誘因抗原の解析と、アナフィラキシー発症リスク解析 (研究プロジェクト3)、を実施することとなりました。さらに2022年度「新興・再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究事業」においては、特にブレイクスルー感染者を標的にした解析を加速するための研究費が追加配分され研究を実施することとなりました。本公開文書では、SARS-CoV-2感染者に誘導された抗体の感染防御能と交叉免疫性評価 (研究プロジェクト2) について情報公開いたします。

 

研究対象者:SARS-CoV-2感染入院患者で重症度4分類(新型コロナウイルス感染症COVID-19診療の手引き、第5版)した各グループの患者と、非感染健常者を対象者といたしますが、2022年の感染対象者はブレイクスルー感染の疑われる患者のみを対象者とします。

 

・軽 症:「呼吸器症状なし、または咳のみで呼吸困難なし」の状態で、胸部画像上、肺炎所見がなく、酸素飽和度が室内気で96%以上ある患者

 

・中等症Ⅰ: 胸部画像上、肺炎所見があり、酸素飽和度が室内気で94%~95%あり、酸素投与の必要性がない患者

 

・中等症Ⅱ: 酸素飽和度が室内気で93%以下であり、酸素投与が必要な患者

 

・重 症:集中治療室(ICU)に入室、または人工呼吸器が必要な患者

酸素飽和度と臨床状態で重症度に差がある場合、高い方に分類する

 

・非感染健常者:非感染健常者検体は、感染履歴の無いワクチン接種、非接種健常者の検体をもってしますが、COVID-19ワクチン接種者に誘導された抗体の感染防御能と交叉免疫性解析の研究 (研究プロジェクト 1) に参加する共同研究機関の国立病院機構三重病院が収集するCOVID-19ワクチン接種健常被験者で、ワクチン接種前の検体をもって非感染健常者検体とします。

 

・ブレイクスルー感染の疑われる対象者:慶應義塾大学でのCOVID-19ワクチン研究「新型コロナウイルス感染症に対するワクチンによる免疫獲得に関する研究」(慶應義塾大学医学部倫理委員会、承認番号20200330)においてワクチンの単回、あるいは複数回接種者の中で、すでに同意のもとに検体が収集され、匿名化された既存検体の中で、ブレイクスルー感染の疑われる対象者検体と、感染の疑われる対象者の初診時の採取検体の感染防御能と交叉免疫性を評価します。さらに2022年10月以後に開始するブレイクスルー感染者検体の収集では、2回以上のワクチン接種者を対象に、長崎大学病院、徳島大学病院、徳島県立中央病院、徳島県立三好病院、徳島県立海部病院、徳島県鳴門病院が、新たに共同研究に参加します。
なおSARS-CoV-2感染者は、気道検体(鼻腔ぬぐい液、唾液、喀痰など)中に、核酸増幅検査法によるSARS-CoV-2ウイルス遺伝子の検出陽性者、あるいはSARS-CoV-2ウイルス抗原検出陽性者を持って定義します。

 

研究方法:上記の研究対象者の血清または血漿検体100 μL(全血で200μL)中の感染防御能を示すIgG抗体の濃度とその抗原親和性を測定します。具体的には、SARS-CoV-2感染入院患者の日常診療で採血する残余検体から血清または血漿検体100 μLを分取し、COVID-19抗体価を [全長S1 spike protein、NTD(感染増悪抗体認識部位)、RBD(ACE2認識-感染中和抗体結合部位)、CTD(C末端領域部位)]それぞれに対する抗体価を測定すると共に、それぞれの領域に対する抗原親和性、交叉免疫性による感染防御能の解析を実施します。なお、交叉免疫性は、武漢系統株、オミクロン変異株、その他新たに出現した変異株との交叉免疫性を調査します。なお検体を用いた遺伝子解析は実施いたしません。
血液検体は入院時(必須)と外来患者の場合は初診時(必須)、入院患者にあっては入院中の最重症状態時、さらに発症から1ヶ月±1週間目(退院のケースを含む)、の採取が望ましいが、少なくとも入院時(必須)、外来患者にあっては初診時を必須といたします。最重症状態の血液検体は入院時が最重症の場合及び入院中の状態が入院時と変わらない場合、入院時検体のみであっても良い。退院時が最重症の場合は退院時検体が最重症時の検体も兼ねます。

 

・ブレイクスルー感染の疑われる対象者:慶應義塾大学でのCOVID-19ワクチン研究においてワクチンの単回、あるいは複数回接種者の中で、すでに同意のもとに検体が収集され、匿名化された既存検体の中で、ブレイクスルー感染の疑われる検体の評価においては、既存検体の他に上記の入院患者に限定されることなく、外来で取り扱う該当者をも含みます。さらに2022年10月以後に開始するブレイクスルー感染者検体の収集では、ワクチン2回以上の接種者で感染の疑われる対象者のみを対象として、上記入院患者に限定されることなく、外来で取り扱う該当者をも含みます。

 

期間:試験全体の期間:承認日~2024年3月末までとします。但し患者登録は、承認日~2023年3月末までとします。

 

症例数:重症度分類されたSARS-CoV-2感染入院症例、外来症例合わせて450 症例、非感染健常者 150 症例、2022年度の対象者はその内のブレイクスルー感染者230症例を目標として、検体収集ではワクチン最終回接種からの経過時間に制限はありませんが、最終回接種時期の記載を必須といたします。重症度4分類の各群の症例数は必ずしも均一である必要はありません。なお本学での予定症例数は、5症例を目標としています。

 

委員会承認:本研究は、倫理審査委員会の承認を得て実施しています。

 

 

2.研究に用いる試料・情報の種類および保管方法について

研究に用いる資料:SARS-CoV-2感染入院患者の血清または血漿100 μLを用いて、感染防御能を示すIgG抗体の濃度と抗原親和性、交叉免疫性を測定します。また、検体を採取したときの年齢、新型コロナウイルス感染の状況と重症度、治療経過、治療薬の服用情報などで、検体を採取したときの情報を一緒に提出いただきます。

 

保管方法:すべての検体は、-20℃以下で凍結保存し、凍結のまま徳島大学に輸送します。収集した試料・情報の管理者は徳島大学の木戸 博特任教授とします。なお、AMED「先進的医療機器・システム等開発プロジェクト」において実施する本研究では、「SARS-CoV-2感染者に誘導された抗体の感染防御能と交叉免疫性解析」に関与する医療機器の承認申請を計画していることから、収集した試料・情報の提供元と提供先では、承認の可否が明確となるまでその授受の記録を保管します。個人情報は、各研究機関の責任者が外部ネットワークとの接続の無い研究用端末等で電子媒体として施錠可能な場所で保管します。保管期間終了後は完全に廃棄し、本研究以外には使用いたしません。

 

3.本院以外の研究機関への試料・情報の提供

データの提供は、特定の関係者以外がアクセスできない状態で行います。対応表は、各研究機関の責任者が保管・管理します。本研究の情報を目的以外で使用する必要が生じた場合、もしくは他の機関へ提供する(二次利用)場合は、改めて倫理審査委員会での承認を得て行います。また、検体提供者からデータの開示要求があった場合、試験終了後に開示いたします。

 

4.研究組織

国立大学法人徳島大学先端酵素学研究所、生体防御病態代謝研究分野 特任教授 木戸 博
国立大学法人徳島大学先端酵素学研究所、生体防御病態代謝研究分野 特任助教 高橋 悦久
国立大学法人徳島大学先端酵素学研究所、生体防御病態代謝研究分野、研究員 澤淵 貴子
昭和大学医学部内科学講座呼吸器・アレルギー内科学部門、教授 相良 博典
琉球大学大学院医学研究科 感染症・呼吸器・消化器内科、助教 金城 武士
国立病院機構沖縄病院、呼吸器内科、医長 藤田 香織
慶應義塾大学医学部、感染症学教室、教授 長谷川 直樹
慶應義塾大学医学部、臨床検査医学教室、教授 涌井 昌俊
慶應義塾大学医学部、臨床検査医学教室、専任講師 上蓑 義典
長崎大学医学部、呼吸器内科、教授 迎 寛
長崎大学医学部、呼吸器内科、准教授 髙園 貴弘
徳島大学病院、感染制御部、部長 東 桃代
徳島県立中央病院、呼吸器内科、部長 柿内 聡司
徳島県立三好病院、呼吸器内科、部長 田宮 弘之
徳島県立海部病院、病院長 浦岡 秀行
徳島県鳴門病院 内科、部長 山村 篤司郎

AMED「先進的医療機器・システム等開発プロジェクト」共同研究分担者
・国立病院機構三重病院、名誉病院長 藤澤 隆夫
・応用酵素医学研究所株式会社、社長 鈴木 宏一

 

5.研究結果の公表について

本研究の結果は学会や雑誌等で公表することがありますが、公表に際しては特定の研究対象者を識別できないように措置を行った上で取り扱います。

 

 

6.研究資金および利益相反管理について

本研究は、国立研究開発法人・日本医療研究開発機構(AMED)からの受託研究費を使用して実施されます。また、本学の研究者の中に、高密度集積高性能蛋白チップの供給元で本研究の実施機関となっている応用酵素医学研究所(株)から本研究とは別に研究資金を受けている者、役員で株式を所有している者がありますが、本研究の実施や報告の際に、金銭的な利益やそれ以外の個人的な利益のために専門的な判断を行うことは一切ありません。また本研究の利害関係については、臨床研究利益相反審査委員会の審査を受け承認を得ております。

 

7.本研究への参加を拒否する場合

試料・情報が当該研究に用いられることについて、患者さんもしくは患者さんの代理人の方にご了承いただけない場合には研究対象としませんので、下記の連絡先までお申出ください。その場合でも患者さんに不利益が生じることはありません。なお、本研究に関するご質問等がありましたら下記の連絡先までお問い合わせ下さい。またご希望があれば、他の研究対象者の個人情報及び知的財産の保護に支障がない範囲内で、研究計画書及び関連資料を閲覧することが出来ますのでお申出下さい。

 

8.研究責任者および連絡(問合せ)先

【研究機関】 国立大学法人徳島大学先端酵素学研究所
【研究責任者】 生体防御病態代謝研究分野 特任教授 木戸 博
【連絡先】 国立大学法人徳島大学先端酵素学研究所・生体防御病態代謝研究分野 木戸 博 電話番号: 088-633-7425 秘書室
【研究代表者】国立大学法人徳島大学先端酵素学研究所・生体防御病態代謝研究分野 木戸 博

 

本研究への参加に同意しない場合は、上記連絡先までご連絡下さい。もしくは研究組織記載の参加施設の担当者までご連絡下さい。
昭和大学医学部内科学講座呼吸器・アレルギー内科学部門、教授 相良 博典
琉球大学大学院医学研究科 感染症・呼吸器・消化器内科、助教 金城 武士
国立病院機構沖縄病院、呼吸器内科、医長、藤田 香織
慶應義塾大学医学部、感染症学教室、教授 長谷川 直樹
長崎大学医学部、呼吸器内科、准教授 髙園 貴弘
徳島大学病院、感染制御部長、東 桃代
徳島県立中央病院、呼吸器内科部長、柿内 聡司
徳島県立三好病院、呼吸器内科部長、田宮 弘之
徳島県立海部病院、病院長、浦岡 秀幸
徳島県鳴門病院、内科部長、山村 篤司郎

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