平成25年1月12日 金城武士 第12回 肺分子病態研究会 奨励賞

第12回 肺分子病態研究会 奨励賞受賞報告

 2013年1月12日、福岡にて第12回肺分子病態研究会が開催されました。本研究会は種々の呼吸器疾患に関する基礎研究から臨床研究に至るまで、最新の研究成果が発表される場であり、私もアメリカ留学中に行った研究を発表させて頂きました。どれも興味深いすばらしい研究ばかりでしたが、私の研究を高く評価して頂き、奨励賞を頂くことができました。

 私は、「非メチル化CpG ODNの遅発性抗炎症反応を利用した薬剤性肺障害の発症予防」というタイトルで発表させていただきました。哺乳類のDNAはCpG配列のシトシンがメチル化修飾を受けていますが、ウイルスや細菌由来のDNAはほとんどがメチル化を受けておらず、Toll-like receptor 9 (TLR9)はこの非メチル化CpG構造を認識して免疫反応をスタートさせます。人工的に合成した非メチル化オリゴヌクレオチド (CpG ODN)は、その免疫賦活作用を利用した臨床応用がすすんでおりますが、近年、このCpG ODNは遅発性に抗炎症反応を惹起することが報告されました。そこで、「非メチル化CpG ODNによって誘導される遅発性の抗炎症反応を薬剤性肺障害の発症予防に利用できないか」という仮説を立て、ブレオマイシンによるマウス肺障害モデルを用いて実験を行いました。詳細は割愛しますが、CpG ODNの前投与を受けたマウスは致死量のブレオマイシンを投与されても100%生存することができ、肺内サイトカイン産生量や白血球数は有意に抑制されていました。また、亜致死量のブレオマイシンを投与して、2週後の肺内コラーゲン量比較および病理組織学的検討を行いましたが、CpG ODN投与群で有意にコラーゲン産生量が少なく、病理組織学的にも細胞浸潤や線維化が抑制されていました。近年、IL-17AおよびTGF-betaは線維化の過程で協調的に働くとされていますが、CpG ODN投与群では肺でのIL-17AおよびTGF-beta産生が有意に低値でした。またCpG ODN投与群では肺でのIL-10やIDO発現が有意に増強していましたが、ノックアウトマウスあるいは中和抗体を用いた検討ではそれぞれの単独欠損ではCpG ODNの効果は減弱しなかったことから、CpG ODNによる保護効果には複数の抗炎症因子が関与していると考えられました。以上より、CpG ODNによる遅発性抗炎症作用を利用し、肺内に臓器保護的環境を作り出すことで、薬剤性肺障害を予防、あるいは軽減できる可能性が示唆されました。

 今回、私がこのようなすばらしい賞を受賞できたのは、アメリカ留学を快くサポートして頂いた藤田次郎教授、ならびに医局員の先生方のご協力のおかげだと考えております。この場を借りて、心より感謝申し上げます。ありがとうございました。

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