日本と台湾における肺アブセッサス症の原因亜種分布と臨床像解析、および臨床分離株の遺伝子相同性を調査する後ろ向きコホート研究

2017年1月15日

【研究課題名】

日本と台湾における肺アブセッサス症の原因亜種分布と臨床像解析、および臨床分離株の遺伝子相同性を調査する後ろ向きコホート研究

 

【研究の概要】

結核菌は細菌学的に抗酸菌という仲間に分類されますが、結核菌以外の抗酸菌は非結核性抗酸菌(Nontuberculous mycobacteria:NTM)と呼ばれ、結核菌同様、肺炎の原因となります。結核菌はヒトからヒトに感染しますが、NTMは土壌や水中に広く分布しており、環境中からヒトに感染すると考えられています。NTMは現在、約200種類が知られていますが、そのうちヒトへの感染報告があるのは30程度と言われています。肺のNTM感染症は高齢化や免疫不全患者の増加に伴って世界的に罹患率が増加していますが、地域によって菌種分布が異なることが知られています。しかし、沖縄にどのような菌種が多いのかという大規模な研究はありません。NTMは菌種ごとに臨床経過が異なることが知られており、沖縄ではNTMのどの菌種が多いのか、またどのような患者がNTM感染症にかかりやすいかを知ることが重要です。我々が行った先行研究では、Mycobacterium abscessusという、NTMの中でも特に難治性の菌種が沖縄では多い可能性が示されました。本研究では、過去の診療録情報を基にNTMの菌種分布を調べ、Mycobacterium abscessusが原因の肺NTM症の患者さんについては、基礎疾患、胸部画像所見、治療経過などを調べます。

 

また、最近の海外からの研究報告によれば、嚢胞性線維症という病気をもっている患者間で、Mycobacterium abscessusがヒト-ヒト感染している可能性が示されました。しかし、嚢胞性線維症はアジア地域では非常にまれな疾患であり、非嚢胞性線維症患者においても、同様の現象がおこるかは不明です。そこで本研究では東京と台湾の病院とも共同研究を行い、全く別の地域に住む患者(ほとんどは非嚢胞性線維症患者)間で、Mycobacterium abscessusがヒト-ヒト感染を起こしうるかについても調べます。

 

 

【研究の方法】

研究対象施設は、琉球大学医学部附属病院、沖縄県立中部病院、国立病院機構沖縄病院、那覇市立病院、沖縄県立南部医療センター・こども医療センター、豊見城中央病院、中頭病院、沖縄赤十字病院、浦添総合病院、ハートライフ病院、沖縄第一病院、北部地区医師会病院、沖縄県立北部病院、沖縄県立宮古病院、沖縄県立八重山病院、結核予防会複十字病院(東京)、慶應義塾大学病院(東京)、台湾大学医学院附属病院(台湾)です。いずれかの病院で、2012年1月から2017年12月の期間に喀痰などの気道検体からNTMが検出された症例を調べ、どのようなNTM菌種が検出されたかを調べます。Mycobacterium abscessusが原因の肺NTM症の患者さんについては、基礎疾患、胸部画像所見、治療経過などを調べます。さらに、患者さんから検出されたMycobacterium abscessusの臨床分離株が保存してある場合には、その菌株をハンセン病研究センター、結核予防会結核研究所に送付して、遺伝子解析を行い、菌株同士の遺伝子学的相同性を調べます。総研究期間は琉球大学の人を対象とする医学系研究倫理審査委員会から承認された日から2023年12月31日までです。

 

 

【診療録から利用する情報】

検出されたNTM菌種、年齢、性別、喫煙歴、基礎疾患(呼吸器疾患や心疾患、糖尿病など)、内服薬(免疫抑制剤や胃薬の使用)、胸部画像所見、投与された治療薬とその後の経過。

 

【個人情報の取り扱いについて】

本研究で使用する診療情報は、患者さんの氏名や住所などの患者さんを特定できる個人情報は削除します。また、研究成果は学会や学術雑誌などで発表することがありますが、その際も患者さんを特定できる情報は一切使用しません。

 

【本研究で得られた試料・情報の二次利用について】

本研究で得られた試料・情報が、琉球大学か研究協力機関における「人を対象とする医学系研究倫理審査委員会」にて今後新たに承認された臨床研究で二次利用される可能性があります。

 

【参加を希望されない患者さんへ】

本研究への参加を希望されない場合には、下記までご連絡下さい。あなたに関するデータを削除いたします。拒否されても患者さんやご家族に不利益は生じません。ただし、学術発表などすでに公開された後のデータなど、患者さんやそご家族からの撤回の内容に従った措置を講じることが困難となる場合があります。

 

 

【お問い合わせ先】

〒903-0215
沖縄県中頭郡西原町上原207番地

琉球大学医学部附属病院 第一内科
助教 金城武士

TEL 098-895-3331(内線:1144)
FAX 098-895-1414

 

【各施設の研究責任者】

沖縄県立中部病院     責任者:長野宏昭(呼吸器内科、医師)

沖縄県立北部病院     責任者:西山健太(総合内科、医師)

沖縄県立宮古病院     責任者:平井潤(内科、医師)

沖縄県立八重山病院    責任者:吉嶺厚生(内科、医師)

国立病院機構沖縄病院   責任者:比嘉太(呼吸器内科、医長)

那覇市立病院       責任者:松野和彦(呼吸器内科、医長)

沖縄県立南部医療センター 責任者:東正人(呼吸器内科、部長)

豊見城中央病院      責任者:佐藤陽子(呼吸器内科、医長)

中頭病院         責任者:伊志嶺朝彦(呼吸器内科、副院長)

沖縄赤十字病院      責任者:赤嶺盛和(呼吸器内科、副院長)

浦添総合病院       責任者:名嘉村敬(呼吸器内科、医師)

ハートライフ病院     責任者:普天間光彦(呼吸器内科、部長)

沖縄第一病院       責任者:比嘉基(呼吸器内科、医師)

北部地区医師会病院    責任者:田里大輔(呼吸器・感染症科長)

結核予防会複十字病院   責任者:森本耕三(呼吸器センター、医長)

慶応義塾大学病院     責任者:長谷川直樹(感染制御部、部長・教授)

台湾大学医学部附属病院  責任者:Po-Ren Hsueh(感染症科、教授)

 

 

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